滝井通信

第75回卒業証書授与式 式辞

2024.03.02

 梅の開花で厳しかった冬の寒さも和らぎ、日増しに春の息吹が感じられる季節となりました。
 本日ここに、大阪国際滝井高等学校第75回卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、公私ともにお忙しい中、ご来賓として、大阪府教育庁私学課 伊藤参事様、守口市教育委員会 田中教育長様、卒業生の各出身中学校長様、卒業生の実習先であるこども園の皆様、本校後援会・同窓会の役員の皆様、旧教職員並びに本学園関係者の皆様など多くのご来賓の方々にご臨席を賜り、卒業生の門出を祝っていただきますこと、心から感謝申し上げます。
 皆々様には日頃から厚いご支援やご指導をいただいており、この場をお借りしまして、改めて御礼を申し上げます。
 
 さて、ただいま、本校第75期生 185名に卒業証書を授与いたしました。本日ご臨席いただきました保護者の皆様方には、ご息女の晴れのご卒業、誠におめでとうございます。
 高校時代は、長い人生のうちでも、心身ともに大きく成長すると同時に多感な時期でもあります。ご苦労、ご心配もあったことと思いますが、今このように立派に成長され、晴れやかに巣立ちゆく我が子の姿を目の前にされますと、皆様方の感激もひとしおのことと存じます。教職員一同を代表して心からお祝い申し上げます。


 第75期生のみなさん、卒業おめでとうございます。青春真っ只中のこの三年間は、みなさんにとってどんな高校生活だったでしょうか。
 振り返ってみますと、私はみなさんが本校に入学する1年前に校長になったのですが、その際奥田理事長よりある命題を受けました。それは滝井としての最終学年を迎える上で、その生徒たちが在学中に二倍の楽しみを感じ、大いなる満足感を持って卒業していけるような、そして、卒業した生徒が社会に出た後もその子がいるだけで周りを変えていける存在になれるような仕掛け・取り組みを考えてほしいというものです。
 また、その取り組みを象徴する新しいキャッチフレーズも作ってほしいとの話しもありました。そこで、誕生したキャッチフレーズが、この3年間みなさんと共にあった「毎日キラキラ☆一生ヒロイン宣言!」です。
 このキャッチフレーズのもと、在学中の行事・イベントを中心とした「キラキラプロジェクト」と、卒業後にも活きる学びに取り組む「ヒロインプロジェクト」を展開しました。
 「キラキラプロジェクト」では、修学旅行や、文化祭・体育大会と続く滝井フェスタ、ノー制服デーに芸術鑑賞と様々なことに取り組みましたね。
 また、「ヒロインプロジェクト」では、各界で活躍する著名人や卒業生を招いてのヒロインセミナーや、学年ごとにテーマに沿って探究活動を行うヒロインプログラムなどを実施しました。みなさんは何が一番思い出に残っていますか?
 修学旅行は、当初みなさんに約束していたものから、コロナ禍の影響や経済環境の変化により、普通科も国際科も行き先が変わってしまいましたが、多くの人からとても楽しく思い出に残る修学旅行だったと言ってもらうことができました。私も普通科の修学旅行に同行しましたが、決して忘れられない思い出になっています。
 修学旅行以外にも、「ヒロインセミナーのあの人の話が心に響いた」とか「ノー制服デーがとても楽しかった」などの喜びの声も多く聞くことができ、先生方とともに精一杯取り組んできましたが、奥田理事長からの命題にも、みなさんの期待にも何とか応えることができたでしょうか。

 また、みなさんには後輩がおらず、学年が進むにつれ、2年生の時には2学年に、3年生の時には自分たちだけの1学年にと、どんどん在校生が減っていってしまう環境でした。入学当初から分かっていたこととはいえ、寂しい思いをする場面もあったかと思います。
 特に文化祭や体育大会は、大変楽しみで大きな行事ながら、3学年そろったこれまでと同じやり方はできない行事でした。われわれ教員側はとても心配していたのですが、何するものぞ、みなさんは行事の内容を自ら工夫し、誰しもが積極的に準備や運営に取り組んでくれました。
 そして当日は、天真爛漫、元気溌剌に行事を楽しむ姿を見ることができ、われわれの心配は取り越し苦労、みなさんの前向きな姿勢とパワーは本当に素晴らしいものでした。
 みなさんも、内容はそれぞれにせよ、きっと数え切れないくらいたくさんの思い出が出来たことと思います。そうした経験はどれもみなさんを大きく成長させてくれたに違いありません。そして、多くの友や先生方と過ごしたこの年月は、みなさんの将来にとっても、大きな礎となってくれるはずです。


 今日みなさんが胸につけている撫子の花ですが、本校が創立時の帝国高等女学校の時から学校の象徴として位置付けられ、校章や校旗にも使われていたものです。現在、校章は「OIU」に変わりましたが、創立以来の校歌の中には撫子の花が今も歌われています。
 多くの卒業生が撫子の花に深い愛情を注ぎ、青春時代の思い出として心に刻んだ校歌ですが、長い年月親しんできた撫子の花に寄せる思いは、五弁の花びらになぞらえて、「明るい心」「清き心」「直き心」「優しい心」「強き心」という撫子の精神として受け継がれてきたものです。
 みなさんも滝井の卒業生として、いつまでもこの撫子の精神を持ち続けてください。


 さて最後に、みなさんは、『不将不逆(ふしょうふぎゃく)』という言葉を知っているでしょうか。
 私の好きな言葉の一つですが、これは、中国の古典の「荘子」にある言葉です。それは、次のようなものです。

  『至人(しじん)の心を用いるは鏡の如し。将(おく)らず、逆(むか)えず。』

 この後半の「将(おく)らず、逆(むか)えず」を漢字四文字で書いたものが『不将不逆』です。
 至人とは、「物事の道理をわきまえた思慮分別に長けている人」との意味です。
 鏡はいつでも前に立った人をそのまま映し出すだけのものであり、その人が鏡の前から立ち去ればもう何も映っていません。すぐれた人の心のもちようは鏡のようだと言っているわけですが、それはどういうことでしょうか。
 『不将不逆(ふしょうふぎゃく/おくらずむかえず)』とは、過ぎ去った過去のことを悔やまず、まだ見ぬ将来を恐れたり思い悩んだりしないという意味です。
 すぐれた人は、「今」だけを映す鏡のように、「今」に集中して、「今」という時間を充実させることができる人です。みなさんがこれから生きていく世界は先行きが不透明なことも多いでしょう。しかし、そうした中でもいつも泰然として、その時その時を一生懸命生き、将来を見据えてチャレンジをし続ける、みなさんにはそんな人になってほしいと思います。

 みなさん、あらためて卒業おめでとう。そしてこれからもがんばれ!滝井の凛とした乙女たち。
 ぜひこれからの人生もキラキラと光り輝くものにし、それぞれのフィールドで活躍するヒロインでいてください。いつまでも応援しています。


 本校は、昭和4年の開校以来、94年間紡ぎ続けてきたその歴史に幕を閉じます。その長きに亘って本校および本校生徒を支えていただいたすべての方々にあらためて感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。
 なお、本学園の傘下には、一昨年、大阪国際高校が開校しております。
 この滝井の地での学びは本日をもってピリオドを打ちますが、本校の歴史と伝統は大阪国際高校に継承されております。本日ご列席の皆様方におかれましては、大阪国際高校に本校同様のご支援をお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。
 

令和6年3月2日
大阪国際滝井高等学校
校長 松 下 寛 伸