滝井通信

大人への階段 ~「精神的独立」~

2023.03.24

 みなさん、おはようございます。校長の松下です。
 さて、今日は3学期の終業式、みなさんにとって、2年生としての最終日になります。
 新学期からは、いよいよ最終学年、3年生となるわけですが、みなさん、今どんな心境でしょうか?

 高校生活は2年生が一番充実しているなどと言う人もいますが、この1年間コロナも少し落ち着きを見せた中で、学校行事もほぼ例年通りに実施することができました。みなさんも、存分に楽しんできたことと思います。ついこの間までは修学旅行に行っていたわけですね。きっとみなさん、一生の思い出に残る素晴らしい旅になったことと思います。
 そして、いよいよ最高学年の3年生。みなさんは、自らの進路により真剣に向き合い、将来の自分がどうあるべきかということに思いを馳せないといけないわけです。そこで今日は、そんな今のみなさんに私が伝えたいことをお話ししたいと思います。

 みなさんは、3年生になり、それぞれの誕生日が来ると18歳になりますね。みなさんも知っている通り、18歳になればもう成人です。法律上、「大人」として扱われるわけです。選挙で投票もできますし、自らの意思だけで色々な契約をすることもできます。

 でも、「大人」って何でしょう?

 考え方は様々あると思いますが、私は「独立」していることだと思います。「独立」つまり、“独りで生きていける” ということです。
 「えっ、だったら、18歳になったら、自分一人で生活しないといけないっていうこと?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。私がみなさんに言いたいのは、「精神的な独立」です。

 日本では、高校を卒業しても一人暮らしをせず、自宅に残る人の方がはるかに多いですが、アメリカでは、18歳になって、独り暮らしをしない人はあまりいないそうです。文字通り、親元を出て「独立」するわけですが、それに加えて、高校を卒業する時点で、「こういうことを学ぶためにこの大学に進み、自分は将来こういう道に進むんだ」というような明確なビジョンがあると言います。つまり、「精神的にも独立」しているわけです。
 みなさんは、高校生であるうちはもちろんそうでしょうし、大学や専門学校に進学した後も、おそらく自宅から通う人がほとんどですよね。それはそれでいいのです。
 ただし、私がみなさんに言いたいのは、高校を卒業する時には、親や先生に頼らずとも、自らの将来を自分で切り開いていく意志と力を持っている、つまり「精神的に独立」していてほしいということです。そして、高校最後の1年を過ごす中で、それを意識した歩みを着実に進めていってほしいということです。


 私は社会人になってから、職場で多くの若者と一緒に仕事をしてきましたが、社会に出てから大きく成長する人には、幾つかの共通点があります。
 一つは、性格や姿勢の問題ですが、みんな「素直」であるということです。
 この「素直」については、またどこかの合同朝礼でみなさんにお話しするようにします。

 そして、もう一つの共通点ですが、それは「勉強以外の経験をたくさんしている人」です。
 決して、勉強しなくていいという意味ではありませんよ。勉強ももちろん大事だけれども、勉強だけやっていた人が必ずしも世の中で成功するというわけではありません。だって、世の中で起きることがすべて教科書や本に書いてあるわけではないですからね。
 「勉強以外の経験」も人それぞれ色々あります。スポーツに打ち込んだ人もいれば、アルバイトをたくさんして社会にもまれた人、少し経済的に苦労しながら大学を卒業した人なども、社会人になってからは大きく活躍していました。
 社会では何が起きるか予測できません。また、今まで経験したことのないことに直面してもそれを乗り越えていかないといけません。その連続です。
 そうした時に必要となるのは、自ら考える力、思考力やコミュニケーション力、協調性や柔軟性、ストレス耐性といった様々な社会適応力です。以前の合同朝礼で、学校というところは、勉強以外にも社会で必要とされる多くのことを学べる場だという話をしましたね。まさにそれと同じことです。

 私はみなさんを入学当初から見ていますが、この2年間でもみなさんは大きく成長しています。しかしながら、大人への最終階段を上るみなさんが送る最後の1年は、これまでとは比べものにならないほど、みなさんを大きく成長させ得る1年になるはずです。
 自分の将来について、大いに考え、悩んだらいいと思います。そして、授業にも学校行事にも、悔いの残らぬよう精一杯取り組んでください。そうした取り組みを通じた様々な経験から多くの力を身につけることができれば、みなさんは「精神的な独立」を果たした真の「大人」として、この学校を卒業していくことができるはずです。

 明日から春休みです。みなさんそれぞれに、最終学年に向けての決意を固めて、新年度に臨んでください。新学期にそうした思いを胸にしたみなさんと、また会えることを楽しみにしています。

 それでは、私の話は以上です。どうもありがとうございました。