滝井通信

第74回卒業証書授与式 式辞

2023.02.20

 梅の開花で厳しかった冬の寒さも和らぎ、春の鼓動が感じられる、喜びの季節となりました。
 本日ここに、大阪国際滝井高等学校第74回卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、公私ともにお忙しい中、ご来賓として、大阪府教育庁私学課 道上課長様、本校後援会 水嶋会長様、同窓会 堤会長様にご臨席を賜り、卒業生の門出を祝っていただきますこと、心から感謝申し上げます。
 本来であれば、その他にも多くのご来賓の方々にご臨席賜るところですが、本年はそれが叶いません。誠に口惜しい限りですが、皆々様には日頃から厚いご支援やご指導をいただいており、この場をお借りしまして、改めて御礼を申し上げます。

 さて、ただいま、本校第74期生129名に卒業証書を授与いたしました。本日ご臨席いただきました保護者の皆様方には、ご息女の晴れのご卒業、誠におめでとうございます。
 高校時代は、長い人生のうちでも、心身ともに大きく成長すると同時に多感な時期でもあります。ご苦労、ご心配もあったことと思いますが、今このように立派に成長され、晴れやかに巣立ちゆく我が子の姿を目の前にされますと、皆様方の感激もひとしおのことと存じます。
 教職員一同を代表して心からお祝い申し上げます。

 第74期生のみなさん、卒業おめでとうございます。
 青春真っ只中のこの3年間は、みなさんにとってどんな高校生活だったでしょうか。
 きっと数え切れないくらいたくさんの思い出が出来たことと思います。そうした経験はどれもみなさんを大きく成長させてくれたに違いありません。そして、多くの友や先生方と過ごしたこの年月は、みなさんの将来にとっても、大きな礎となってくれるはずです。
 
 しかしながら、みなさんが高校生活を送ったこの3年間は大変厳しい時期と重なってしまいました。新型コロナウイルス感染症の拡大により、入学式を執り行うことができず、その後も約2か月間休校となり、みなさんの高校生活のスタートは大変重苦しいものでした。
 私もみなさんの入学と同じタイミングで校長になりましたので、ある意味、みなさんとは「滝井高校同期」です。そのみなさんとの学校生活をとても楽しみにしていましたから、生徒の声がまったく響かない学校にいるのは、言葉にできないほどつらいものでした。
 その後も、みなさんが1年生と2年生であった2年間は、学校活動全般で大きな制約を受けました。文化祭や体育大会など、行事の多くが中止や延期、内容変更となりましたし、修学旅行も行き先や時期の変更を余儀なくされました。
 しかしながら、みなさんが3年生になってからは、少し世の中の状況も変わってきました。コロナの病気自体のこともかなり分かってきましたし、感染防止に努めながら、徐々に以前の活動を取り戻していこうとの動きになってきました。学校活動も同様です。
 本校でも、今年度は、ほぼ予定通りに行事を実施することができました。遠足や合宿行事、文化祭に体育大会、学年行事や各コースごとの実習や行事などもそうですね。ようやく本来の学校の姿に戻ってきた、そんな一年になったかと思います。みなさんも、3年生になってようやく、思い描いていた高校生活を送れる、そんな実感を持てたことと思います。

 私がこの一年間でもっとも印象深かったのは、何と言っても、文化祭と体育大会でのみなさんの頑張りと笑顔です。
 文化祭・体育大会は、みなさんにとっても初めての経験です。分からないことだらけで、当日の運営はもちろん、準備段階でも本当に大変だったと思います。しかし、先生方からのアドバイスを受けつつも、何事も皆が率先して動き、生き生きと活動している姿は、とても素晴らしいものでした。
 また、当日の演技や競技での弾けるようなみなさんの笑顔を見ていると、こちらまで楽しくなり、清々しいまでの喜びを感じました。みなさんも、こうした行事を通じて、多くのことを学び、成長を感じ、そして仲間との友情を深めることができたことと思います。

 コロナに翻弄された高校生活を振り返ると、みなさんも “なぜ自分たちの時に…” とうらめしく思い、くじけそうになった時もあったかもしれません。コロナ禍がなければ、もっとちがう形で楽しい高校生活を送れたのにと。
 しかし、人生の楽しみは「喜怒哀楽の総量」です。
 我々は、楽しいことやうれしいことはたくさんあってもいいけれど、悲しいことやつらいことはできるだけ少なくしたい、ついそう思いがちです。つまり、プラスの感情はOKだけれでも、マイナスの感情はNGだと。
 しかし、それはそれで人生が味気ないものになってしまいます。やはり人生は、「喜楽」もあれば「怒哀」もあった方がいい。ゲラゲラ笑ったり、腹を立てて怒ったり、悲しんだり、喜んだりと、喜怒哀楽たくさんある人生の方がはるかに面白いし、たくさんの思い出とともに、みなさんの人生を豊かにしてくれるはずです。
 「うれしいことプラス100」と「悲しいことマイナス100」でプラスマイナスゼロになるのではなく、その絶対値を足して200になるのです。
 そのためにも、グチグチと悩んでいるより、「今日は一つ面白いことをやってやろう」と行動する、そんな姿勢を持ちたいですね。

 シンガソングライターの永井龍雲さんの歌に、「道標(しるべ)ない旅」という歌があります。歌詞は次のようなものです。

 
 閉ざされた部屋の窓を 開けてごらんよ
 いつもでもそんな風に 塞(ふさ)いでいないで
 
 そこにあの日 希望に燃えて
 君が見上げた
 青い空が変わらずに 続いているはずだ
 
 大空に群れなす鳥たちよ
 君の声を見失うなよ
 青春を旅する若者よ
 君が歩けば そこに必ず道はできる

 
 生きていく上で、つらいことや悲しいことなど無い方がいいです。でも、実際はなかなかそうはいかないものです。
 みなさんの高校生活も最初はふさぎ込みたくなるようなつらいものだったでしょう。しかし、高校生活の最後の年がそうであったように、閉ざされていた窓も、いったん開けてみると、そこには希望につながる青い空が続いているはずです。
 みなさんは今日、いよいよ高校を卒業して新しい世界に飛び立ちます。これからもみなさんの人生には、色々なことがあるでしょう。楽しいこともあれば、困難なことも待ち受けているかもしれません。しかし、どのような局面であっても、自分自身を見失わず、自分自身を信じ、その志を貫いていってください。その輝かしい未来に向かって歩み出すみなさんの前には、必ず新たな道ができていくはずです。


 みなさんと私は「同期」です。この3年間を共に過ごしてきました。
 合同朝礼の場では、みなさんに考えてもらいたいこと、新たな気付きとしてほしいことをずっと話してきました。その数、全部でちょうど50回です。みなさんは、その私の話を全部聞いてくれました。
 その他にも、先生方や仲間との交わりの中で多くのことを学んだことと思います。その滝井の3年間で学んだことをベースに、今後もさまざまなことに関心を持って新たなチャレンジをしていってください。そうしたチャレンジからの経験は、自分自身で考える力や行動力を育てるとともに、自らを支えそして社会に貢献できる力となってくれるはずです。

 みなさん、あらためて卒業おめでとう。そしてこれからもがんばれ!滝井の凛とした乙女たち。
 ぜひこれからの人生もキラキラと光り輝くものにし、それぞれのフィールドで活躍するヒロインでいてください。いつまでも応援しています。

 結びに、第74期生のみなさんひとり一人の存在がご家族にとっては希望の光であり、また地域社会そして国際社会にとっては未来を担うたくましい力となることを心より祈念しまして、私の式辞といたします。


令和5年2月20日
大阪国際滝井高等学校
校長 松 下 寛 伸