滝井通信

その一秒を削り出せ!

2021.01.08

 みなさん、おはようございます。そして、新年明けましておめでとうございます。校長の松下です。
 2021年、令和3年、新しい年が始まりました。みなさんは年末年始をどのように過ごしましたか。例年ですと、初詣に行ったり、旅行や帰省をしたりと、みなさんそれぞれのお正月を過ごしたところでしょうが、今年はそうもいかなかったですよね。その分、テレビやネット動画をたくさん見たよという人もいるでしょう。

 みなさんの中で、箱根駅伝を見た人はいますか?
 箱根駅伝は、東京と箱根の間を二日間かけて往復する駅伝大会で、総距離は200km以上。これを10人でタスキをつないでいきます。箱根駅伝は今や正月の風物詩。スタートからゴールまでテレビで完全生中継され、今や国民的大イベントになっています。
 今日はみなさんに、そんな箱根駅伝にまつわる話を一つしたいと思います。

 話の時期は今から10年前の2011年です。
 最近は大学駅伝は青山学院大学が強いですが、当時は東洋大学が黄金時代を築いていました。東洋大学は2009年、2010年と2年連続で優勝し、2011年は三連覇を狙っていました。その年の東洋大学は、「山の神」と言われたエース柏原竜二選手を擁し、優勝候補の筆頭でした。レースがスタートしても、東洋大学は順調にレースを運び、1日目の往路を大会新記録で優勝、誰しもが今年も東洋大学が総合優勝かと思いました。
 ところが、翌日の復路、第6区で早稲田大学にかわされ2位となると、東洋大学は結局最後まで追いつくことができず、総合優勝を逃す結果となりました。東洋大学のタイムは前年を8分以上も上回る大会新記録でしたが、それでも2位。1位の早稲田とのタイム差はわずか21秒。1位と2位のタイム差としては、大会史上最も小さいものでした。

 最上級生の4年生はこの大会で引退。大会翌日、新チームでの練習開始時のミーティングで監督と新チームのメンバーが話し合った内容が次のようなことです。

 「箱根駅伝はトータル10区間218km。各区間の走者がそれぞれ20km以上を走る。それだけの長丁場のレースで、終わってみれば優勝の早稲田とわずか21秒差。それぞれが1区間でタイムを2秒縮められれば追いつける差だった。勝利への執念が足りなかった。」

 「この悔しさを胸に、今日この日の練習から常に一秒を大事にし、チームのために一秒でもタイムを縮めるよう努力しよう。その一秒を削り出せ!」

 それから一年後、2012年の箱根駅伝。結果はどうだったと思いますか?
 東洋大学は往路、復路、総合とすべて大会新記録での優勝という完全制覇。2位駒沢大学とのタイム差は史上最大の9分2秒。全10区間のうち、6区間で区間賞を獲得しました。
 箱根の山を越えていくという起伏の激しいコースで、2区以降はずっと1位という余裕のあるレース展開だったにもかかわらず、全区間の平均で1キロ2分59秒42という驚異的なタイムを刻みました。
 この年の東洋大学駅伝部員は、前年の悔しい思いを胸に、毎日の苦しい練習の時も、そしてレース当日も、実際にレースを走っている選手だけでなく部員全員が、「その一秒を削り出せ!」を合言葉に誰一人妥協することなく、努力し続けたのです。その結果が他大学を圧倒する完全制覇でした。

 わたしたちも、クラスや学年、部活動等でチームで活動する機会はたくさんあります。チームとして成果が出せるか、成長できるかは、その取り組みのあり方次第です。チームとしての共通の目標を定める。その共通の目標に向かっていく中で、メンバーが思いを一つにする。その思いのもとにみなが努力した結果、チームの総合力は計り知れないほど大きくなる、その典型的な例だと思い、みなさんにお話ししました。

 さあ、新しい年がスタートしました。今の学年としての日々は残り少なくなっています。みなさん個々人の思いを結集して、チーム滝井として、今年も楽しい学校生活を送れるよう、取り組んでいきましょう。
 また、昨年はコロナに翻弄された一年となり、みなさんも色々な場面でつらかったり、悔しい思いをしたことと思います。その分も、今年はこうありたい、こんな自分になりたいと、みなさんそれぞれが自分の目標をしっかりと持って、日々過ごしていきましょう。
 年初にあたっての私の話は以上です。どうもありがとうございました。