滝井通信

第73回卒業証書授与式 式辞

2022.02.21

 梅の開花で厳しかった冬の寒さも和らぎ、春の鼓動が感じられる、喜びの季節となりました。
 本日ここに、大阪国際滝井高等学校第73回卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、公私ともにお忙しい中、本校後援会・同窓会の会長様にご臨席を賜り、卒業生の門出を祝っていただきますこと、心から感謝申し上げます。本来であれば、その他にも多くのご来賓の方々にご臨席賜るところですが、本年はそれが叶いません。誠に口惜しい限りですが、皆々様には日頃から厚いご支援やご指導をいただいており、この場をお借りしまして、改めて御礼を申し上げます。

 さて、ただいま、本校第73期生157名に卒業証書を授与いたしました。本日ご臨席いただきました保護者の皆様方には、ご息女の晴れのご卒業、誠におめでとうございます。高校時代は、長い人生のうちでも、心身ともに大きく成長すると同時に多感な時期でもあります。ご苦労、ご心配もあったことと思いますが、今このように立派に成長され、晴れやかに巣立ちゆく我が子の姿を目の前にされますと、皆様方の感激もひとしおのことと存じます。教職員一同を代表して心からお祝い申し上げます。

 第73期生のみなさん、卒業おめでとうございます。青春真っ只中のこの三年間は、みなさんにとってどんな高校生活だったでしょうか。きっと数え切れないくらいたくさんの思い出が出来たことと思います。楽しいことや嬉しいこともあったでしょうし、逆に苦しいことやつらいこともあったかもしれません。そうした経験はどれもみなさんを大きく成長させてくれたに違いありません。そして、多くの友や先生方と過ごしたこの年月は、みなさんの将来にとっても、大きな礎となってくれるはずです。
 しかしながら、みなさんが二年生と三年生であったこの二年間は大変厳しい時期と重なってしまいました。新型コロナウイルス感染症の拡大により、二年生のスタートは長い休校となり、その後も二年間を通じて学校活動やクラブ活動などが大きな制約を受けました。文化祭や体育大会など、行事の多くが中止や延期、内容変更となり、修学旅行もついに行かせてあげることができませんでした。とても残念でなりません。みなさんも “なぜ自分たちの時に…” とうらめしく思い、くじけそうになった人もいたかもしれません。コロナ禍がなければ、もっとちがう形で楽しい高校生活を送れたことでしょう。
 しかし、「逆境は人を育てる」といわれます。コロナでつらい思いをたくさんしたけれども、みなさんはその分強くなりました。命や家族、友人の大切さも学びました。そして、様々なことを自分で考え乗り越えていく力も身についていっているはずです。コロナ禍での逆境や理不尽からみなさんが学んだことは、きっとみなさんの世代の強みになってくれるに違いありません。

 シンガソングライターの中島みゆきさんの歌に、「時代」という歌があります。歌詞は次のようなものです。
 
   今はこんなに悲しくて 涙もかれ果てて
   もう二度と笑顔にはなれそうもないけど
 
   そんな時代もあったねと
   いつか話せる日が来るわ
   あんな時代もあったねと
   きっと笑って話せるわ
   だから今日はくよくよしないで
   今日の風に吹かれましょう
 
   まわるまわるよ時代はまわる
   喜び悲しみくり返し
   今日は別れた恋人たちも
   生まれ変わってめぐりあうよ
 

 生きていく上で、つらいことや悲しいことなど無い方がいいです。でも、実際はなかなかそうはいかないものです。だけど、人は頑張って生きていかないといけない。みなさんにとって決して満足のいく高校生活ではなかったかもしれないけれども、みなさんの長い人生を考えればほんのひと時のことです。卒業式が終わったら、もうくよくよするのはやめて、未来に向かって歩みだしてほしいです。きっと、「あんな時代もあったね」とみんなで笑って話せる日もくるはずです。

 人生、誰しも楽しいことばかりが起こるわけではありません。でも人生を楽しんでいる人とそうでない人がいます。楽しいことが起きる人は、日常的に楽しいことに自分の視点を当てているからです。逆に楽しいことが起きない人は、楽しくないところに視点を当てているから。つまり、人生を楽しくできるかどうかは、現実が決めるのではなく、自分の心が決めることです。今、目の前のことを楽しむ力。みなさんの人生にとって、とても大切な力です。

 今は新型コロナウイルスによる健康や経済へのマイナスの影響の方が注目されますが、コロナ禍を克服した後、新たな社会の実現へと動き出すプラスの面の変化にも想像力を働かせてください。たとえばリモート技術が普及し、離れていても互いを確認しながら会話ができる新しいコミュニケーションが定着しました。近い将来、バーチャルでも、より現実に近い環境を再現しながら、対話ができるようになるかもしれません。
 今後、AIや5Gなどを使いこなし、新しい社会を築いていくのはみなさんの世代です。世界は地球環境、貧困などの課題にも直面しています。みなさんには、「新しい時代は私たちがつくるんだ!」という気概を持って、これからさらに学んでいってほしいと思います。そして、滝井の三年間で学んだことをベースに、今後もさまざまなことに関心を持って新たなチャレンジをしていってください。そうしたチャレンジからの経験は、自分自身で考える力や行動力を育てるとともに、自らを支えそして社会に貢献できる力となってくれるはずです。

 皆さん、あらためて卒業おめでとう。そしてこれからもがんばれ!滝井の凛とした乙女たち。
 ぜひこれからの人生もキラキラと光り輝くものにし、それぞれのフィールドで活躍するヒロインでいてください。いつまでも応援しています。

 結びに、第七十三期生の皆さんひとり一人の存在がご家族にとっては希望の光であり、また地域社会そして国際社会にとっては未来を担うたくましい力となることを心より祈念しまして、私の式辞といたします。
 
 
令和4年2月21日
大阪国際滝井高等学校
校長 松 下 寛 伸