滝井の人

小林勇介

2021.10.26

情報科教員の小林です。
コロナ禍になってからリモートやオンラインという言葉をよく耳にします。授業形態もここ2年で目まぐるしい変化が起こりました。先生も生徒も同じ感想ではないでしょうか。
最近、ようやく感染者数が減少して、あらゆる制限が少しずつ緩和されていく様子に嬉しい毎日です。さて、コロナ禍になってからの生活変化といえば読書量が増えて走る距離が長くなったことです。これは良いことだと思っています。あと、物の整理をする時間が多くなって、整理をした物の中に沢山の写真や記事がありました。私の現役時代を母がスクラップしたものです。引退したときに母から渡されましたが、当時はサッと見ただけですぐにクローゼットに片づけました。今になって見返してみると恥ずかしい写真もたくさんありました。負けた試合の写真や記事です。あと、準優勝で悔しくて破り捨てた賞状を母がノリで貼って修復しているものもあります。それを見て思い出したことがあります。第一線の競技者(勝負師)という生き物は全てを賭けて臨んだ試合に敗れたとき、頭が真っ白になって絶望に襲われますが、母はいつも「胸を張りなさい」と声をかけてくれました。表彰台に乗る時の私の情けない顔が凄く嫌だったそうです。「頑張った自分を認めてあげなさい」ということを解らせたかったのです。現役時代、ずっとファンでいてくれたのは他ならぬ母であり一番激励をくれたのも母だったと思います。何かを本気で頑張るということは自分に大きな成長をもたらしますがたまに大きな錯覚も起こします。特に目標に向かってうまくいっていないときにそれは起こります。自分は一人で頑張っているという錯覚です。人を正しい方向に導いてくれる人の存在は時と場合によっては鬱陶しく映ります。でも、そんな人ほど大事にして下さい。その時、わからなくても後からわかることなんてことは山ほどあります。気づいてからでも遅くありません。自分という人間を大事に思ってくれる人は一生の宝といってもいいでしょう。これは教師という仕事をして私自身が再確認した内容でもあります。皆さんは今、親をはじめ大人を鬱陶しく感じることもあると思います。でも、忘れないようにしてください。すべては立派な大人になってほしいという親心からです。社会は厳しいです。でも、そんな社会でも幸せに生き抜く力を授けたいと願っているからです。スポーツは相手を倒して勝利を求めるものですが武道は礼を重んじ、精神を鍛えるものです。精神を鍛えることは肉体を鍛えることより難しいと思います。それぞれの人生のターニングポイントで現れる自分を叱ってくれる人の存在を大事にしてみてください。価値観がかわることをお約束します。この滝井高校には皆さんをきちんと叱ってくれる先生がたくさんいます。いい意味でその説教を利用してみてください。


スクラップ写真の中の1枚です。
 母に抱っこされているのが当時2歳の私で隣が父です。父の隣はロサンゼルス五輪代表の山下先生です。左端は香月先生といってモスクワ五輪幻の代表です。
山下先生はモスクワ五輪日本不参加の絶望をばねに84年のロサンゼルス五輪で見事に金を獲得します。
その五輪前の全日本合宿に親交のある父が激励に訪れた時の1枚です。この時から私は勝負師になる運命だったのかもしれませんね。笑