滝井通信

第72回卒業証書授与式 式辞

2021.02.22

 梅の開花で厳しかった冬の寒さも和らぎ、春の鼓動が感じられる、喜びの季節となりました。

 本日ここに、大阪国際滝井高等学校第七十二回卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、公私ともにお忙しい中、本校後援会・同窓会の会長様にご臨席を賜り、卒業生の門出を祝っていただきますこと、心から感謝申し上げます。本来であれば、その他にも多くのご来賓の方々にご臨席賜るところですが、本年はそれが叶いません。誠に口惜しい限りですが、皆々様には日頃から厚いご支援やご指導をいただいており、この場をお借りしまして、改めて御礼を申し上げます。

 さて、ただいま、本校第七十二期生 百八十四名に卒業証書を授与いたしました。本日ご臨席いただきました保護者の皆様方には、ご息女の晴れのご卒業、誠におめでとうございます。高校時代は、長い人生のうちでも、心身ともに大きく成長すると同時に多感な時期でもあります。ご苦労、ご心配もあったことと思いますが、今このように立派に成長され、晴れやかに巣立ちゆく我が子の姿を目の前にされますと、皆様方の感激もひとしおのことと存じます。教職員一同を代表して心からお祝い申し上げます。

 第七十二期生のみなさん、卒業おめでとうございます。
 青春真っ只中のこの三年間は、みなさんにとってどんな高校生活だったでしょうか。きっと数え切れないくらいの思い出が出来たことと思います。楽しいことや嬉しいこと、逆に苦しいことやつらいこともあったでしょう。そうした経験はどれもみなさんを大きく成長させてくれたはずです。
 また、授業はもちろんクラブ活動や各種行事など、学校生活を通して、皆さんは様々なことを学びました。「規則正しい生活を送る習慣を身につける」「時間や約束を守る」「物事の良し悪しを正しく判断する」といった基本的なことはもちろん、「目上の人を敬う」「他者を気遣う」「思いやりの心を持つ」といった人との関わりなどもです。こうしたことは、皆さんが社会に出た際に必ず身につけておかなければいけないことです。
 この他にも、すぐに結果が出ないものに対しても継続して「粘り強く取り組んでいく姿勢」や他者と協働して「新たなものを創り出していく姿勢」、また他人(ひと)から評価を受けた中から「新たな課題を見出して取り組んでいく姿勢」などもそうです。皆さんは三年間の高校生活を経て、授業で学んだ知識以外にも多くの力を身につけているのです。
 皆さんが三年生として過ごしたこの一年は、とてもつらく苦しい一年間だったと思います。しかし、この経験も皆さんにとって決して無駄なことではありません。社会に出れば自分の思い通りにならないことも多く、「そうした理不尽を乗り越えていくたくましさ」も身につけていかねばならないからです。この一年間の経験は、皆さんにこうした力をつけてくれたはずですし、皆さんの将来にとって、きっと大きな糧になるはずです。

 さて、皆さんはこれから「人生の新たなステージ」に飛び立つわけですが、そのステージは、グローバル化と多極化がうねりを増す「未知の時代」です。生活様式や価値観も大きく変わっていくことでしょう。皆さんは、そんな未知の時代を生き抜いていかねばならないわけです。しかし、「未知の時代」と言っても、それは皆さんにとっては自分たちが生きている“自らの時代”です。今の時代に一番合った感性やバランス感覚を持っているのは、まさに皆さんなのです。皆さんはこれからの時代に必要なことやあるべき姿を見出すことが出来ますし、やっていかねばなりません。そのためには、「自分を大切にする」「自分の未来を大切にする」「自分をみがくことをあきらめない」そうした姿勢が大切です。
 その上で皆さんに期待したいのは、この三年間で学んだことをベースに、今後も様々ことに関心を持って「新たなチャレンジ」をしていく姿勢です。また、自分とは違う考えを持つ多様な人との交流も、より大事になってくるでしょう。そうした姿勢から、皆さんの感性はより研ぎ澄まされ、自分の考えをしっかりと持てるようになります。真の教養とは、“何を知っているかではなく、何が言えるか、何ができるか”です。幅広い教養を深め、世界の動きにも視野を広げていく。その過程で“どう生きるべきなのか”自分自身と向き合う時間を過ごすことが大切です。その時には、様々なことにチャレンジした経験が、自らを支える“生きる力”になってくれるはずです。

 『人生は心ひとつの置き所。晴れてよし、曇りてもよし、富士の山。もとの姿は変わらざりけり』
 これは幕末から明治にかけての思想家、山岡鉄舟の言葉です。皆さんの人生はとても長いものです。これからも色々なことが起きるでしょう。しかし、どんな問題が起きようとも、それを引き起こしたのは自分自身で、原因は常に自分にあり。他人(ひと)のせいにせず、他人(ひと)と比べず、自分が全力で問題の解決にあたるという姿勢をくずさないこと、それが良い人生を送るための鉄則です。

 皆さん、あらためて卒業おめでとう。そしてこれからもがんばれ!滝井の凛とした乙女たち。
 ぜひこれからの人生もさらに光り輝くものにしてください。いつまでも応援しています。

 結びに、第七十二期生の皆さんひとり一人の存在がご家族にとっては希望の光であり、また地域社会そして国際社会にとっては未来を担うたくましい力となることを心より祈念しまして、私の式辞といたします。
 
 
令和三年二月二十二日
大阪国際滝井高等学校
校長 松 下 寛 伸