滝井の人

佐川 昭

2021.02.08

1・17に想う
 今年も、その日がやって来た。その日から今年で26年目。その日とは、1995年1月17日、阪神淡路大震災の起こった日。中学生の皆さんにとっては、社会(歴史)の授業で習うことかもしれません。当時、起床時刻は6時前だったので、5時45分に目覚まし時計で目を覚まし、テレビのニュース番組にチャンネルを合わせ、2度寝しようとしていたところ、ベッドの下から突き上げるような揺れが、襲い掛かってきた。あわててテレビのスイッチを切り、ベッドから落ちないように自分の体を押さえつけようとした。揺れが収まり、電気・ガスが異常ないことを確認し、出勤の用意を始めた。テレビは、すべて地震速報になっていた。被害の状況が報道されるにつれて、過去に経験したこともない大災害だということがわかってきた。大阪梅田と神戸三宮を結ぶ阪神電鉄・JR・阪急電鉄はすべて途中で線路が遮断された。あるニュース番組で映画監督の大森一樹氏(芦屋市)に電話がつながっており、自宅から阪神高速道路の橋脚が倒壊し、道路上に倒れているのが見えるとのこと。とても信じられない衝撃的なニュースだった。神戸市東灘区で生まれ、西宮市(甲子園)、尼崎市(武庫之荘)で計33年過ごした自分にとっては、自分のこれまでの人生が破壊されたようにも感じた。あまりにも厳しい現実を突きつけられた気分だった。

あれから26年。神戸の街も着実に復興を遂げてきた。6000人以上の死者を出し、街に壊滅的な被害を与えた自身のことを経験していない世代も増えてきた。家族、親戚、友人をなくした人たちの心の痛みは一生消えないけれども、少しずつ、それまでと変わらない日常を取り戻してきた。

と、ここまで自分の思いを書いてきましたが、少し、重たい雰囲気になってしまいましたね。少し気分を変えて、震災後、変わった点を考えてみましょう。あの震災をきっかけとして、それまであまり行われていなかった防災に関する意識が高まり、自治体や学校で啓発活動や防災教育が実施されるようになりました。中学生の皆さんも、これまでに小学校や中学校の時に、防災に関する授業を受けて人も多いと思います。守口市にも防災対策を備えた公園が整備されていたり、滝井高校でも防災に関する授業が行われています。
ところで皆さんはお家で水道の水を出すとき、レバーを上げますか、それとも下げますか?普段は、おそらく無意識にしていることなので、あらためて聞かれると、どっちだったかなと考える人もいるかもしれません。正解は、水を出すときはレバーを「上げる」です。でも、震災前は水を出すときはレバーを「下げる」のが普通でした。しかし、地震で、レバー周辺の物が落下し、水が出っぱなしになる事故が多発したため、震災後に下げると水が止まる方式に変わっていきました。レバーの上げ下げが今までと反対になる…これも新たな生活様式の一つの例でしょう。


新型コロナウイルス感染症が蔓延し、緊急事態宣言も延長されることになりました。もう少し我慢を続けなければなりません。私たちの生活様式もこの1年くらいの間で変わることを余儀なくされてきました。まだまだ不自由を感じる生活が続きますが、マスク着用・手洗い・消毒など新しい生活様式にも慣れてきたのではないでしょうか。これまでは、何かいいことないかなと思っていても何事もなく終わり、そんな時は平凡でつまらない日だと感じたこともありました。でも、何も起こらないことが本当は幸せなことなんだと、このコロナ禍の時期に特に感じるようになりました。普通のありふれた日常こそ、本当は素晴らしいものなのですね。
最後に、高校受験を目前に控えた中学生の皆さん、受験当日は特別なことをしようと思わず、普段の自分の実力を発揮すれば、道は開けます。皆さんの健闘を祈っています。