滝井通信

大統領選挙から学べるアメリカ生活史

2020.11.02

 みなさん、おはようございます。校長の松下です。暦はもう11月。秋も深まり、気温もグッと下がってきましたね。今年度の学校生活もいよいよ後半戦です。みなさん、健康には気を付けて、日々の生活を充実したものにしていきましょう。

 さて突然ですが、みなさん、今のアメリカの大統領の名前は分かりますか? 大体の人は分かると思いますが、そうトランプさんですね。フルネームは、ドナルド・ジョン・トランプ、第45代大統領です。ところで、みなさんは、今、4年に1度行われる大統領選挙がその選挙戦の真っ只中なのは知っていますか? いよいよ明日113日が投票日です。大統領選の様子は毎日のようにテレビや新聞で報道されていますが、アメリカの政治や経済だけでなく、世界にも影響を及ぼすリーダーを決めるものですから、ぜひ高校生であるみなさんにも注目してほしい選挙です。

 さて、この大統領選挙ですが、投票日は毎回必ず「11月の第一火曜日」と決まっているんです。日本では通常、選挙の投票日は日曜日ですよね。みなさんの中でも、3年生でもう18歳の大阪市に住んでいる人は、昨日、大阪都構想の住民投票に行った人もいるはずです。では、なぜ大統領選挙は火曜日なのでしょう? また、どうして毎回11月なのでしょう? 不思議ですよね。分からないことは直ぐ調べる性質の私、調べてみました。

 投票日の「11月の第一火曜日」ですが、実は正確には「第一月曜日の次の火曜日」と定められています。これは、111日が「諸聖人の祝日」というカトリックの祝日であるため、この日が投票日になるのを避けるためです。そして、そもそもなぜ「11月」なのかと、なぜ「火曜日」なのかというのにも理由があります。
 今でこそアメリカは自動車やエネルギー、そしてITなど、世界を代表する企業がたくさんある経済大国ですが、かつては農業国でした。そのため、大統領を選ぶ選挙の時期は、作物を育てるのに忙しい農繁期を避け、収穫を終えて本格的な冬が到来する前のタイミングとして、11月が選ばれたのです。そして曜日ですが、日曜日はキリスト教徒にとっては安息日。選挙日とすることは出来ません。しかも、その当時は投票所は大きな都市にしかなく、庶民の移動手段が馬車だったため、移動にとても時間が掛かりました。そこで、月曜日に家を出発して、実際に投票できる火曜日が投票日となったという訳です。

 大統領選挙がなぜ「11月の第一火曜日」に行われるのか。それをひも解くだけで、宗教や産業、地理・交通事情など、昔のアメリカ人の暮らしぶり・生活史が分かります。
 それにしても、今はわずかな時間で投票所に行けますし、みな仕事がある平日に投票しなければならないのに、昔からのそのままのやり方を続けているのも面白いですね。

 このように、私たちの身の回りには普段は意識することはなくても、地域や歴史、生活、宗教などに関連付いているものがたくさんあります。なぜこんな風になっているんだろう? なぜこんな仕組みになっているんだろう? と思ったことは、そのままにせず調べてみると思わぬ発見があるかもしれませんよ。

 今日の私の話は以上です。どうもありがとうございました。