滝井の人

長尾 知香

2020.04.20

こんにちは、英語科の長尾知香です。
今年度から大阪国際滝井高校に来ました。皆さん、よろしくお願いします。


さて、滝井に来る前に私は何をしていたかというと、大学生の傍ら、母校の軽音楽部のコーチをしていました。主にドラムを教えたり、音響機材の操作をしたりしていました。 ちなみに私はドラムの楽譜しか読めません。ト音記号とヘ音記号の楽譜はほぼ読めません…。というのも、小学校の低学年で音楽の授業につまづいた私はそれから音楽とは仲良くなれない日々を送っていたからです。そんな私がこうして音楽に関わっているのは本当に奇跡のようなことなのです。

きっかけは、ある日母が買ってきた『NANA』という漫画でした。中島美嘉が歌う“GLAMOROUS SKY”を知っている方も多いのではないのでしょうか。あの名曲を生み出した原作の漫画です。それを読み、実写化した映画を観た長尾少女は「バンドってかっこいい!!」とバンドにとてつもない憧れを抱きました。そしてたまたま目に入ったドラムソロをきっかけに小6からドラムを始め、のめりこんでいったのです。

そして高校で念願のバンドデビューを果たします。
初めてバンドメンバーとうまく音が合わさった高1の夏の発表会は今でも忘れられません。叩く音全てが周りの音に溶けていく、夏の眩しさに照らされてまるで自分たちがきらきらと輝いているような感覚。たった1曲5分のために何時間も何時間もかけた練習が儚く、ステージで一瞬だけ光るのです。それでもその一瞬が楽しくて、忘れられなくて、また輝きたいと、練習に励みました。
高2で出場したスニーカーエイジでは世界が広がりました。今までに経験したことのない大舞台で演奏できた経験はかけがえのないものになりました。

高校卒業後、コーチに着任し、初めは試行錯誤の日々でした。教える立場に立つことが初めてだった私にとって、教えることはそう簡単なものではなかったからです。でも1つだけいつも大事にしていたのは「音楽を楽しんでほしい。仲間と1つの音楽を作る楽しさとステージに立ったあの感覚を感じてもらえたら。」という気持ちでした。
私が現役で出場したスニーカーエイジにコーチとして関わることもできました。メンバーと1つになって1つの目標に向かって進む生徒たちの背中の後押しして、彼女たちと一緒に歩むことはコーチだからできた経験です。
今まで出会ったたくさんの仲間に、音楽を通して見たこともない景色をたくさん見せてもらいました。綺麗な景色だけじゃなかったです。泥のようにもがいたり、これでもかというくらいにぶつかったり。血も汗も涙も全部流したように思います。ですがそれもこれも今はかけがえのない経験です。コーチとしての経験は私を学校の先生の道へと導いてくれました。この経験がなければ私がこうして「滝井の人」を書いていることもなかったでしょう。そうしてたくさんの生徒さんや関わってくださった方にもらったものがひとつずつ実を結び、今こうして滝井高校に導かれているのです。

高校の文化祭
高校の文化祭
高2で出場したスニーカーエイジ
高2で出場したスニーカーエイジ
コーチとして関わったスニーカーエイジ
コーチとして関わったスニーカーエイジ

さて話を大きく変えましょう。

私は英語科ですが、実は中学校に入るときにはアルファベットもろくに言えませんでした。これも小学校で英語の授業につまづいてからどうしても英語とは仲良くなれず、そのまま中学生になってしまったからです。まず構造がわからない、意味も分からない、なんだ、全部わからないじゃないか、とこういう感じです。「はーわーゆー?」がなぜ「あなたはどう?」になるのかがわからないので挨拶も嫌いでした(笑) ここまでくると絶望的です。そんな私が英語との仲良くなれたのは、英語の意味と「なぜこうなるの」をとことん聞いて教えてくれた先生のおかげでした。すると、英語がある時からパズルのように見えて、楽しくなったのです。

ですが、高校は理科専攻でした。理由は理科が好きだったから、それだけです(笑)しかし理科との別れは突然やってきました。理系の大学に行けなかったのです。そして高校の付属の大学に行くと、英語との再会が待ち受けていました。仲良しだった友達に何年かぶりに会うようなそんな感覚です。こうして英語と感動的な再会を果たした私は英語科の先生になったのです。


人生何があるかわかりません。仲良くなかった音楽と突然仲良くなれたり、大好きな理科との別れがやってきたり、犬猿の仲だった英語が今や相棒になったり。ふと出会った一冊の漫画が、少し苦い経験が、悲しい経験が、何かのきっかけになって自分のプラスになることだってあるのです。時間がかかっても、きっといつか糧になって自分に返ってきてくれます。今起こるすべてのことに無駄なものなんて何ひとつありません。今、世界的にも大変な時期ではありますが、これもきっといつか私たちの糧になると信じて乗り越えていきましょう!!